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CAPTAINの航海日記

CAPTAINの航海日記

CAPTAINの一筆書き旅行記 その5

<CAPTAINの一筆書き旅行記 その5 ~中部・関西編(前編)~>

◎はじめに
今回の旅行は、中部・関西編(前編)です。
(前編)としているのは、この地域の鉄道網が複雑でこれまでの旅行期間の4~5日では制覇できないからです。
参考までに大まかなルートを示すと、東海地方~紀伊半島~大阪(1回目)~奈良~京都(1回目)~岐阜~北陸~京都(2回目)~大阪(2回目)~兵庫…と西日本の二大都市・京都と大阪を2回通る形となるんですが、今回は1回目の京都でいったん引き上げます。
あと、個人的な話になるんですが、今回以降の旅行に登場する路線は、九州の一部を除いて、まだ乗ったことがありません。従って、本当にトンチンカンな表現や描写が頻出するかと思いますが、無知に免じてご容赦願えれば幸いです。
なお、JR西日本では路線に愛称・通称をつけるケースが多いですが、本文ではすべて正式名称に統一しておりますので、ご了承願います。

1・中部・関西編(前編)・初日(桑折~新横浜~豊橋)
◎本日のルート
桑折  10:12 ~ (東北本線) ~ 福島  10:27
福島  10:33 ~ (東北新幹線・つばさ222号) ~ 東京  12:12
東京  13:04 ~ (東海道新幹線・こだま417号) ~ 小田原 13:38
小田原 13:56 ~ (東海道本線) ~ 三島 14:40
三島  14:58 ~ (東海道新幹線・こだま421号) ~ 静岡  15:20
静岡  15:35 ~ (東海道本線) ~ 掛川 16:20
掛川  16:38 ~ (天竜浜名湖鉄道) ~ 新所原 18:44
新所原 18:52 ~ (東海道本線) ~ 豊橋 19:02(泊)
※一筆書きルート=新横浜~(東海道新幹線)~小田原~(東海道本線)~三島~(東海道新幹線)~静岡~(東海道本線)~掛川~(天竜浜名湖鉄道)~新所原~(東海道本線)~豊橋。距離=本日279.4キロ、通算6,852.5キロ。

◎あらすじ
東日本を脱出して、いよいよ私にとって未知の世界である西日本へと出発します。
初日の今日は、東海道を西へ西へと進みます。豊橋に泊まる予定なんですが、福島の自宅を出発したのは午前10時のこと。東京でお昼を食べてから「よいこらしょ」と重い腰を上げるスローモーな滑り出しです。
東京からこだま417号に乗り込み、13時15分発の新横浜で一筆書き再開。そのまま新幹線で小田原へと向かい、13時38分着。
小田原は、駅舎こそ新幹線停車駅にしては小ぶりで瀟洒な洋館風ですが、私鉄が3本も接続しているので、ホームが新幹線を含めて14もあります。小田原には失礼ですが、地方都市の駅で私鉄が3本も接続するのって、相当珍しいんじゃないかと思います。
13時56分発沼津行普通列車に乗り換えて、三島まで。根府川のあたりの景色は東海道本線でも白眉だとは聞いていたんですが、確かに評判に違わぬ絶景。ここから熱海までの東海道本線は、比較的長い距離を海とつきあいます。
熱海で伊東線が分岐するとすぐに、丹那トンネルに突入。今でこそ長いトンネルの部類には入らなくなり短時間で通過しますが、その難工事を思うと、もう少し堪能したいところです。
トンネルを抜けると函南。あ、言い忘れてましたが、熱海から西の東海道本線は、JR東海の管轄。いよいよ本格的に、(JR)東日本とはお別れです。ほどなく三島の市街地に入り、14時40分、三島着。三島の駅舎も小田原と同様に、新幹線の停車駅なのに三嶋大社を模した寺院風。技術的に無理かもしれませんが、これから建設される新しい新幹線の駅舎にも、これくらいの個性が必要だと感じます。
三島から静岡までは再び新幹線で、こだま421号に乗車。前回の旅行で沼津~富士間の東海道本線を走ったのですが、高さが違うと景色は大幅に変わります。特に富士山は、新幹線から見たほうが確実にGOOD! てっぺんから裾野まですっきりとした姿を見せてくれます。
富士川橋梁を渡ると、トンネルに突入。走っているのは蒲原か由比のあたりでしょうか。この付近の東海道本線は波打ち際を走っていて、国道1号線や東名自動車道と豪華な競演を見せているんですが、新幹線だけが蚊帳の外に置かれた格好です。
トンネルを出ると静岡市、といっても旧清水市。いずれ政令指定都市になって清水区を名乗るんでしょうが、現在は「静岡市清水○○」という住所に面影を残すだけとなっています。清水から先は東海道本線、静岡鉄道と並走し、15時20分、静岡のホームに滑り込みます。
徳川家康ゆかりの静岡はいずれゆっくり訪れてみたい街なんですが、スケジュールが詰まっているので先を急ぎ、15時35分発浜松行の列車に乗り込みます。車内は既に高校生らしき一群で埋まっていて座れませんでしたが、おかげで焼津付近でチラッと海を見ることができて、ちょっと満足。
藤枝を過ぎ、島田へ。ここは仕事でお世話になっている会計士の先生が住んでいる街ですが、薄情にも降りずに通過します。間もなく大井川を渡り、大井川鉄道が分岐する金谷を過ぎると、牧ノ原台地にさしかかり、風景が山間の様相に。あれ、このあたりに山なんてあったっけ? と不思議に思いますが、それは地図上の知識であることを痛感します。山を抜けると菊川、その次が掛川で、16時20分着。。ここで天竜浜名湖鉄道に乗り換えます。
天龍浜名湖鉄道は掛川から東海道本線の静岡県最西端の駅・新所原までの67.7キロの第三セクター鉄道で、戦時中に東海道本線の浜名湖橋梁が破壊されたときに備えての代替路線として開業した経緯を持ちますが、現状はひなびた非電化のローカル線。同区間の東海道本線よりも14.6キロ長いだけなのに駅数は3倍、所要時間も2倍以上かかります。
16時38分発の普通列車に乗り込みます。やっぱりローカル線で、1両編成のワンマンカー。ゆっくりと走りはじめたと思ったら小さい駅に到着というパターンを繰り返します。沿線も至って平凡な田舎の風景なんですが、豊岡を過ぎると山が迫り天竜川も寄り添ってきて、多少様相が変わってきます。すっかり山間らしくなったところで、この線の中心駅・天竜二俣に到着。
遠州鉄道が分岐する西鹿島の手前で天竜川を渡ると、再びのどかな農村風景へ。途中浜松大学前なんて名前の駅に着きますが、学生らしき姿はホームにも車両にも殆どなく、少し淋しくなります。
気賀のあたりから、浜名湖に沿って走ります。湖面は穏やかで、名産のウナギの養殖をやっている様子はありません。養殖のメッカは東海道本線沿いの舞阪や弁天島付近で、逆にこちらは同じく静岡県名産のミカン畑が目立ちます。
線路は、新所原の二つ手前の知波田まで浜名湖に沿います。でも地図でよく見ると、実際に線路に沿っているのは引佐細江、猪鼻湖といった入り江で、付近の地形の複雑さを感じます。
ところどころにアクセントがあったせいか意外に退屈さを感じず、18時44分、新所原に到着。もう陽が暮れましたが、もう少し頑張って、今日は豊橋で泊まります。豊橋は新所原の2つ先。駅構内を出ると愛知県に突入します。


2・中部・関西編(前編)・2日目(豊橋~中津川)
◎本日のルート
豊橋 9:08 ~ (飯田線・特急ワイドビュー伊那路1号) ~ 飯田  11:33
飯田 12:29 ~ (飯田線・中央本線・快速) ~ 岡谷 14:34
岡谷 15:32 ~ (中央本線) ~ 塩尻 15:43
塩尻  16:04 ~ (中央本線) ~ 中津川 17:50(泊)
※一筆書きルート=豊橋~(飯田線)~辰野~(中央本(東旧)線)~岡谷~(中央本(東新)線)~塩尻~(中央本(西)線)~中津川。距離=本日311.8キロ、通算7,164.3キロ。

◎あらすじ
昨日は東海道をひたすら西へ西へと進みました。が、今日は一転。天竜川、木曽川とわが国を代表する急流に沿っての山また山の行程です。
まず乗るのは、豊橋から辰野まで195.8キロの長さを誇る、長大ローカル線です。かつて私鉄だった関係で駅間距離もほぼ2キロに1駅と間隔が短く普通列車で乗り通すのは若干骨が折れる路線なので、豊橋から飯田までは特急に乗ってしまいます。乗り込むのはワイドビュー伊那路1号で、9時08分の発車。
豊橋駅のホームを出た飯田線は、すぐさま名鉄名古屋本線と合流し、3キロちょっとの区間を、呉越同舟ならぬ呉越同線となります。その間飯田線には船町、下地の2駅がありますが、この区間の名鉄は優等列車しか走っていないので、そんな小駅は構わず通過してしまいます。もちろんわが特急も通過。名鉄と分岐した直後の小長井も通過し、次が豊川稲荷で知られる豊川で、最初の停車駅。
豊川から先の飯田線は単線となり、ローカル色が濃くなります。新城、本長篠、湯谷温泉… 周囲はだんだん山に囲まれしかも険しさを増していきます。
東栄の手前で豊川の水系から天竜川の水系へと分水嶺を越え、愛知県から静岡県に突入。静岡県最初の停車駅が中部天竜で、10時17分着。昔の飯田線はここから先は天竜川沿いを進みましたが、佐久間ダムの建設のためにルート変更が行われて、現在は天竜川から山一つ隔てた水窪町を経由しています。佐久間を過ぎると長いトンネルにさしかかり、抜けると水窪町内の相月。天竜川沿岸と同様に、深い谷の底にある駅です。相月から3駅目が水窪で、10時30分発。
水窪から先はまたトンネルで、抜けると天竜川沿岸の大嵐。まだ水窪町内ですが、この駅は本州で一番小さい村・愛知県富山村への玄関口。皇太子妃ご成婚の際に話題となった次の小和田(こわだ)を過ぎると、いよいよ長野県。信越編の最終日に軽井沢を出発して以来だから、6旅行日ぶりの長野県入りです。
それにしても、このあたりは天竜川に山が落ち込む感じで、飯田線も崖っぷちの際どいところばかりを走っています。人家も少なく、どこへ連れて行かれるんだろう? と不安になります。
飯田市内に入って天竜峡でようやく谷が開けて耕地や人家が目立つようになり、11時33分、終点の飯田に到着。ここでお昼休憩&例によってタウンウォッチング。リンゴ並木などを見て回りました。
飯田から先は、12時29分発の上諏訪行の快速に乗車。快速といっても途中の駒ヶ根までは各駅停車なので、駅間距離の短い飯田線らしさを堪能できそうです。
飯田から北の伊那谷は天竜川の河岸段丘となっていて、線路はしばらく天竜川から離れます。従って川は見えませんが、近景に田園、遠景に南アルプスの山々が配されているのどかな風景です。
その只中をトロトロと走っているうちに、ちょっと眠くなってきました。目が覚めると既に駒ヶ根を過ぎて快速区間に突入していました。スピードも心なしか上がっているような気がします。
上伊那地方最大の都市・伊那市や車両基地のある伊那松島などに停車して、14時21分、中央本線に接続する辰野着。飯田線はここで終点ですが、列車はこのまま中央本線に乗り入れます。みどり湖経由の新線が1983年に完成して以来辰野~岡谷間の中央本線は運転上飯田線の延長のように扱われていて、辰野止まりは殆どありません。飯田線はJR東海、中央本線はJR東日本の管轄だから、奇妙な呉越同舟ではあります。
14時34分、岡谷着。ここでもまた、1時間ぐらいタウンウォッチング。諏訪湖まで歩き、天竜川が湖から流れ出る様子を覗いてきました。
15時32分の普通列車で岡谷を発ち、15時43分、塩尻着。ここで16時04分発の中津川行普通列車に乗り換えて、今度は木曽谷を進みます。
二つ目の停車駅・日出塩を過ぎると木曽郡に突入。最初の駅が贄川宿のある贄川で、その後も奈良井、薮原、宮ノ越、(木曽)福島、上松、須原、野尻、三留野(南木曽)と、中仙道の旧宿場町に沿って進みます。こんな旅行じゃなければ、途中下車して歩いてみたいのに… 奈良井や妻籠・馬籠の玄関口にある南木曽で唇を噛みます。それにしても、このあたりの谷は伊那谷よりも深く、ヒノキの産地だからか、緑も一層濃くなっているような気がします。
南木曽を過ぎるとにわかに「野」の雰囲気を感じ、初めての岐阜県入り。17時50分に到着した終点の中津川で、泊まることにします。


3・中部・関西編(前編)・3日目(中津川~多気~伊勢市)
◎本日のルート
中津川 8:27 ~ (中央本線) ~ 高蔵寺 9:18
高蔵寺 9:25 ~ (愛知環状鉄道) ~ 岡崎 10:43
岡崎 10:45 ~ (東海道本線・快速) ~ 金山 11:09
金山  11:14 ~ (中央本線) ~ 勝川  11:28
勝川  12:31 ~ (東海交通事業) ~ 枇杷島 12:47
枇杷島 13:03 ~ (東海道本線) ~ 名古屋 13:06
名古屋 14:08 ~ (関西本線) ~ 亀山  15:19
亀山  15:25 ~ (紀勢本線) ~ 多気 16:27
多気  16:43 ~ (参宮線・快速みえ13号) ~ 伊勢市 16:56(泊)
※一筆書きルート=中津川~(中央本線)~高蔵寺~(愛知環状鉄道)~岡崎~(東海道本線)~金山~(中央本線)~勝川~(東海交通事業)~枇杷島~(東海道本線)~名古屋~(関西本線)~亀山~(紀勢本線)~多気。距離=本日263.2キロ、通算7,427.5キロ。

◎あらすじ
一昨日は一部寄り道はあったけれども東海道筋をひたすら西へと進み、昨日は伊那谷を北上して木曽谷を南下するだけという、いずれも一筆書きらしからぬ単純なルートでした。
しかし今日は違います。我が国第三の都市・名古屋を経由するだけあって、あっちへ行ったりこっちに戻ったりのジグザグ旅行。乗車する路線も中央本線、東海道本線にそれぞれ2回乗車するのを含めて延べ8路線と、多趣多彩です。まず乗り込むのは、昨日もお世話になった中央本線。中津川発8時27分の普通列車で西を目指します。
恵那、瑞浪、土岐市、多治見… 沿線は、「市」の連続です。大都市圏だったら珍しくないんでしょうが、岐阜県でこれだけ長い区間市域を走るとは思いませんでした。多治見を過ぎるとほどなく愛知県。名古屋はもう目と鼻の先です。
ところが、多摩、千里と並ぶ大規模ニュータウンを誇る高蔵寺で、愛知環状鉄道に乗り換えなければなりません。大都市名古屋を目前にして、郊外を延々と走らされる形になります。高蔵寺着は9時18分。接続は良く、愛知環状鉄道の列車は9時25分に発車します。
愛知環状鉄道は国鉄岡多線を引き継いで開業した第三セクター鉄道ということもあり、名古屋に近いところを走っているのに無人駅が異常に多いです。駅に着く度に車掌が切符の回収に大忙し。私の地元の福島交通飯坂線と大差ありません。愛知・名古屋は大都市でありながらしばしば「大いなる田舎」と形容されますが、その一端を垣間見た気がしました。
そんなのんびりした雰囲気の中、三河豊田駅に隣接するトヨタ本社の大工場や徳川家康ゆかりの岡崎城の天守閣を見ながら列車は走り、10時43分、終点の岡崎に到着。ここからは2日ぶりの東海道本線で、再び名古屋方面を目指します10時45分の発車。
岡崎を含めた愛知県内の東海道本線は、名鉄の路線と接する機会が多いです。安城の手前で西尾線と交差し、刈谷では三河線と接続します。ただし、本線格で東海道本線とは競合関係にある名古屋本線はなかなか姿を見せず、名古屋市内に入ってようやく、右手から登場します。と同時に、左手から常滑線が合流し、熱田の少し手前にある神宮前で接続。ここから金山までの名鉄は複々線になります。我が東海道本線は複線のままだから、ちょいと劣等感を抱きます。
熱田の次が、愛知独特の表現で言う「総合駅」の代表格のような金山。JRと地下鉄が2路線ずつ、名鉄も実質2路線が通っている交通の要です。名古屋まではあと3.3キロの至近距離なんですが、ターミナルの宿命で、ここで本日2回目の中央本線に乗り換えます。時計を見るとまだ11時を少し回ったところですが、もう本日3度目の乗り換え。覚悟していたこととはいえ、慌ただしい一日です。
名古屋市街の南東を走り抜け、11時28分着の勝川で下車。ここで東海交通事業城北線にまたまた乗り換え。発車時刻は11時31分のはずですが… ホームはどこだ!? 東海交通事業は元々国鉄が造った路線だからすぐに乗り換えられるさと高を括っていたんですが、これがとんだ大間違い。気がついたときには乗るべき列車は既に出発していました。
東海交通事業は名古屋近郊を走る割には非電化、そして日中は1時間ヘッドのダイヤという閑散路線で、次の列車は12時31分発。おかげで、勝川で昼食という、ちょっと締まらないことになってしまいました。
1時間遅れで、勝川を出発。住宅地の中を走りますが、閑散ダイヤのせいか乗客は殆どいません。この路線はダイヤの他にも他路線とのアクセスにも不熱心なようで、途中で交差する名鉄小牧線、犬山線双方とも、交点に駅がありません。東海交通事業、小牧線双方に味美という駅があるんですが全く離れているし、犬山線の中小田井、上小田井両駅の中間に東海交通事業の小田井駅があったりします。
ならば外の景色でも見て気を紛らわせようかと思ったんですが、これまたほぼ全線が東名阪道の真下というロケーションで、楽しむどころではありませんでした。なんだか消化試合のような道程です。
終点の枇杷島に着き、13時03分発の普通列車で、ようやく名古屋へ。名古屋では当初昼食を含めて2時間ほどの滞留時間を予定していて久屋大通とか名古屋城を見て回ろうかと考えていたんですが、勝川で1時間ロスしてしまったため、ジェイアール名古屋高島屋など駅周辺のスポットを見て回るにとどまりました。
名古屋からは14時08分発関西本線亀山行普通列車に乗車。意外なほどあっさりと名古屋の市街地を抜け出て、社会科の教科書でおなじみの輪中地帯へと入ります。愛知県西端の弥富駅は海抜マイナス93センチで、地上にある駅としては日本最低所にあります。その弥富を出ると昨日木曽路を共にした木曽川を渡り、三重県へ。次の長島を出ると今度は長良川と揖斐川をまとめて渡り、桑名の街へと入ります。
ところで、さっきから気になってしょうがないのが、並行して走る近鉄名古屋線の存在。名阪ノンストップ特急が走る複線電化の近鉄に対してこちらは電化こそされているものの複線だったり単線だったり。しかも優等列車も少なく、完全なローカル線。三重県のJRは南部を除いてどこもかしこも近鉄にお客さんを奪われた形になっており、どことなく活気がありません。三重県最大の街・四日市の駅周辺すらも、石油タンクばかりが目立ち、パッとしない景観です。
河原田で伊勢鉄道と分岐すると関西本線は進行方向を西に変え、一路亀山へ。亀山着15時19分。関西・紀勢の両本線が分岐するだけあって、構えの大きな駅です。ところがこの亀山から先が、ちょっと情けないんですが、両本線とも非電化になってしまうんです。こういった近代化の遅れが、近鉄に負けてしまう原因なんでしょうか?
とにもかくにも、15時25分発新宮行の普通列車に乗車します。下庄、一身田と停車して、左手から先ほど別れた伊勢鉄道が再び寄り添うと県庁所在地の津で、15時45分着。ちなみにこの辺りでは近鉄とも並走していて、近鉄の津駅もJRと同じ位置にあります。
津の市街地は小さく、近鉄と別れ、次の阿漕を過ぎるともう田園風景に。阿漕から3駅目が松阪牛で有名な松阪。ここから先の紀勢本線沿線には大きな街がないので少し早いけど降りて泊まろうかな…と思いかけますが、今日はもう少し先の多気まで行き、そこから寄り道して参宮線に乗り換え、伊勢市で泊まる予定を立てています。
多気着16時27分。ホームで少し待って16時43分、鳥羽行の快速みえ13号で伊勢市へ。ここでも近鉄山田線と並走し、16時56分に到着した伊勢市駅も、津と同じくJRと近鉄がホームを並べていました。
外はまだ明るいです。駅前のお土産屋で赤福を自宅まで送ってもらうよう手配してから、陽のあるうちに参拝しようと、外宮への道を早足で歩きました。


4・中部・関西編(前編)・4日目(伊勢市~多気~和歌山)
◎本日のルート
伊勢市 8:56 ~ (参宮線・快速みえ4号) ~ 多気 9:09
多気  9:23 ~ (紀勢本線・特急ワイドビュー南紀1号) ~ 紀伊勝浦 11:35
紀伊勝浦12:59 ~ (紀勢本線) ~ 串本 13:59
串本  14:34 ~ (紀勢本線) ~ 紀伊田辺16:02
紀伊田辺16:28 ~ (紀勢本線) ~ 御坊  17:17
御坊  17:30 ~ (紀勢本線) ~ 和歌山 18:34
和歌山 18:40 ~ (紀勢本線) ~ 和歌山市18:45
和歌山市20:20 ~ (紀勢本線) ~ 和歌山 20:26(泊)
※一筆書きルート=多気~(紀勢本線)~和歌山。距離=本日338.4キロ、通算7,765.9キロ。

◎あらすじ
8時少し前に、目が覚めました。
もう少し早く起きて二見浦の夫婦岩でも見ようかと思ってたんですが、完全にオジャンです。
まぁいいでしょう。どうせ鉄道に乗るのが目的の旅行ですから。伊勢遊覧は、またの機会にとっておくことにします。という訳で今日は、伊勢市から昨日来た路線を多気まで戻り、紀勢本線で和歌山まで向かうことになります。ちなみに今日乗る路線は、紀勢本線ただ1線だけ。北海道で函館本線にしか乗らない日(小樽~函館)がありましたが、このときはもっと乗れるところを敢えて函館で打ち止めした経緯があるので、純粋に1路線しか消化できない日は今日が初めてになります。
とりあえず多気まで戻り、9時23分発のワイドビュー南紀1号で一気に紀伊勝浦まで行くことにします。同じ三重県内ですが伊勢国と紀伊国の境を走るので、線路は登り勾配となります。街らしい街は特になく、辺りは田園と茶畑が目立ちます。訪れたときは「へ~、三重にも茶畑があるんだ」と暢気に構えていましたが、後で調べて見ると三重県は静岡、鹿児島に次ぐお茶の栽培王国でした。自分の地理知識の不名誉を恥じる次第です。
多雨地帯の大台ケ原を源流とする宮川、更にその支流の大内山川を遡ると、ようやく分水嶺。その後は山肌をトンネルで駆け下り、左手に3日ぶりとなる海が見えると、最初の停車駅・紀伊長島。同じ三重県に長島駅(関西本線)があるから「紀伊」を冠しているんでしょうが、同じ県でこのようなケースが見られるのは他に宮城県の山下(常磐線)と陸前山下(仙石線)ぐらいしか思い浮かびません。
低所に下りて速度を上げた特急はその後も海とつかず離れずの景色の良いところを走り、10時32分、尾鷲に到着。ところがここから先がトンネルだらけ。沈降海岸で波打ち際に用地がなく、長いトンネル→ちょっとだけトンネルを出て波打ち際 のパターンを繰り返します。ちなみに紀勢本線とほぼ並行している国道42号線は、このあたりでは海からかなり離れたところを通っています。
そんな状況をようやく抜け出ると、次の停車駅の熊野市。ここから和歌山県境までの海岸線は七里御浜と称される砂礫の砂浜で、線路も海岸に沿ってほぼまっすぐ進みます。が、右手の熊野の山々は相変わらず緑濃く、列車に迫るかのように聳え立っています。
熊野川を渡ると和歌山県に入り、ほどなく新宮に到着。煙突なんかもあって久々に街らしい街にたどり着いた気がします。ちなみにこの駅からは、JR西日本の管轄で、電化区間に入ります。その後も海岸沿いを走り、11時35分、終点紀伊勝浦の1番ホームに到着。
お昼休みを兼ねて温泉街を一回りし、12時59分発の串本行普通列車で、一筆書き再開。いよいよ本州の最南端へと向かいます。
車窓の景色は、さっきまでと変わらず右手が熊野の山々、左手が太平洋。捕鯨で知られる太地が近いので鯨でも見えるかな…と思いますが見えるわけがなく、肝心の太地駅も町からも海からも離れたところにありました。
ぴったり1時間走って、13時59分、串本着。次の列車は14時34分発なので、串本の町もウォッチング。地形的には函館に似ています。串本から出る列車は紀伊田辺行の普通列車。その後御坊行、和歌山行と乗り継ぎます。同じ紀勢本線なのにちょっと細かい乗り換えです。
串本を出てからもしばらくは海岸とつかず離れずのところを走りますが、周参見を過ぎると、少し山間に入ります。白浜の手前で少し海が見えますが、肝心の白浜の駅が町から丘ひとつ隔てた位置にあったりして、どうもしっくりきません。紀伊新庄でようやく海が見えると同時に新宮以来久々に市街地と呼べる風景が展開し、次が終点の紀伊田辺で、16時02分着。
紀伊田辺からは、16時28分発の御坊行普通列車に乗車。乗車時間は50分ほどで、どうせだったらこの列車を和歌山まで延伸できないかなと思うんですが、ここから先の紀勢本線は複線でカーブも少なくなりスピードも速まっているようなので、許すことにしましょう。
そういえば、あれだけ海岸に迫っていた山も、心なしか後方に退いているような気がします。沿線にはこれまであまり見られなかった田んぼや、紀州名物のみかん畑なども目立つようになってきました。
水量が豊かな日高川を渡るとこの列車の終点・御坊で、17時17分着。街外れに駅があるせいか淋しげな駅前ですが、わが国最短営業距離の私鉄・紀州鉄道がこの駅と市街地との間を結んでいます。紀州鉄道ってリゾート会社のイメージが強かったんですが、小なりとはいえちゃんと鉄道事業もやてるんだなと再認識しました。
御坊からは本日最後の列車・17時30分発の和歌山行普通列車で和歌山へ。沿線は地形的にはこれまでと大差ありませんが、和歌山に近づいているせいか、湯浅、箕島など市街地が目立ってきています。箕島から海南にかけては海岸に石油タンクも登場。これまで一筆書きで通ってきた地域では東京のお隣の千葉県内で石油タンクが目立っていましたが、和歌山県も大阪のお隣だけあって、この手の施設が多いようです。桜の名所として知られる紀三井寺からは、いよいよ和歌山市に突入。その後は市街地を走り抜けて、18時34分、和歌山駅に着きました。
今日の一筆書きの旅はここで打ち切りになりますが、私はここで乗り換えて、紀勢本線の終点で繁華街に程近い和歌山市まで行ってみることにしました。和歌山~和歌山市間はわずか3.3キロだから、数分で着きます。ちなみにこれで、紀勢本線の全線に乗車したことになります。和歌山市駅の近くでラーメンの夕食をとり、再び電車で和歌山駅前の宿に戻ったときには、午後9時近くになていました。


5・中部・関西編(前編)・5日目(和歌山~山科~京都)
◎本日のルート
和歌山 8:19 ~ (和歌山線、桜井線) ~ 奈良 11:07
奈良  12:21 ~ (関西本線・快速) ~ 大阪 13:05
大阪 13:38 ~ (大阪環状線) ~ 京橋 13:45
京橋 13:52 ~ (片町線・快速) ~ 木津 14:43
木津 14:57 ~ (関西本線・快速) ~ 加茂 15:03
加茂 15:08 ~ (関西本線) ~ 柘植 16:02
柘植 16:06 ~ (草津線) ~ 草津 16:45
草津 16:46 ~ (東海道本線) ~ 京都 17:10
京都 18:46 ~ (東海道新幹線・のぞみ26号) ~ 東京 21:06
東京 21:32 ~ (東北新幹線・やまびこ167号) ~ 福島 23:18
福島 23:26 ~ (東北本線) ~ 桑折 23:39(帰宅)
※一筆書きルート=和歌山~(和歌山線)~高田~(桜井線)~奈良~(関西本線)~天王寺~(大阪環状線)~京橋~(片町線)~木津~(関西本線)~柘植~(草津線)~草津~(東海道本線)~山科。距離=本日304.4キロ、通算8,070.3キロ。

◎あらすじ
今日が、中部・関西編(前編)の最終日になります。とはいえ大阪、京都と関西の枢要部を経由するので乗り換えが多い行程です。
まずは、ラッシュアワーの人ごみを掻き分けて、和歌山駅を8時19分に発車する普通列車に乗車します。この列車は和歌山線の終点・王寺まで行かずに途中の高田から桜井線に乗り入れて奈良まで行きます。我が一筆書きのルートも同じ経路なので、乗らないわけにはいきません。
和歌山線は、その大半を、紀ノ川に沿って走ります。川沿いは平野が広がっていて、昨日味わった山と海ばかりの紀州路とは違った雰囲気を、堪能することができます。多少ウトウトしながら過ごすともう橋本で、すぐ先は奈良県。紀ノ川も吉野川と名前が変わります。五条を過ぎると、低い峠を越え、いよいよ奈良盆地へ。10時15分に桜井線との分岐駅・高田に到着。8分停車し、スイッチバックする形で桜井線に入ります。
高田から真東に進み、左右に大和三山が見えてくると、畝傍。奈良県で2番目の人口を有する橿原市の代表駅の位置付けですがどこか淋しい駅前です。橿原の人は大阪と直結している近鉄の大和八木駅を使う機会が多いのでしょう。奈良県も三重県と同様に、近鉄にお客さんを奪われているようです。
線名の由来である桜井から先は、進行方角が真東から真北へと90度変わります。さすがは条里制の本家本元だけあって、このような線路の敷き方を余儀なくされている部分があるんでしょう。天理教の総本山で参詣列車用の立派なホームを有する天理を過ぎると奈良市に入り、11時07分、寺院風の駅舎が特徴的な奈良駅に到着します。
奈良市内では、昼休みを兼ねてタウンウォッチング。近鉄の奈良駅まで往復したんですが、そちらの駅前のほうが県庁や東大寺や奈良公園に近いせいか、JRの駅前よりも活気があるように感じました。
奈良からは、12時21分発の大和路快速で、一気に大阪へ。転換式クロスシートの快適な車両です。
大阪方面への関西本線の線路は、南西にまっすぐ伸びています。このあたりは確か平城京の跡地のはずですが、豪快に無視しています。金魚の養殖用の溜池が目立つ郡山、和歌山線や近鉄の2路線が合流する王寺などに停車して、いよいよ大阪府に突入。
府内最初の駅・河内堅上は丘陵に挟まれた大和川の谷底で周辺に民家もなくホントにここが大阪府内なのかという印象でしたが、次の高井田からは谷が開け、完全に市街地の中。柏原、八尾などを矢のように通過して12時53分、大阪市南部のターミナル・天王寺着。ここから大阪環状線に乗り入れて市街の西部を半周し、13時05分、大阪駅南端に位置するの環状線ホームに到着します。
せっかく訪れた西日本最大の都市・大阪ですが、今日中に福島県まで帰らなければならないので、先を急ぎます。ギャレ大阪をちらっと一瞥しただけで環状線ホームへ戻り、京橋へ。ここで、片町線の快速列車に乗り換えます。
片町線は、地元では学研都市線と呼ばれています。大阪付近のJRの路線には愛称がつけられるケースが多く、東海道本線のようにJR京都線、神戸線の愛称に至ってはなんで阪急の真似なんかするんだろうと個人的には首を傾げてしまうんですが、この学研都市線については、片町線の由来となった片町駅が廃止されてしまった事情もあり、正式線名に昇格させてあげる必要があるのかなぁ…と思います。もっとも、乗客の顔ぶれを見る限りでは、他路線に比べて特に学生が多いようには見えないのが玉に傷ですが。
今でこそ沿線に住宅が張り付いている片町線ですが、生駒山地を避けて北へ大きく迂回している線形のせいか沿線の住宅化や路線の近代化他地域に比べ遅れ気味で、かつては京橋~四条畷間が複線電化、四条畷~長尾間が単線電化、長尾~木津間が単線非電化となっていました。現在は全線電化、松井山手までが複線化されていますが、ここまで整備されたのは平成に入ってからのことです。
その松井山手から先は京都府で、京田辺を過ぎると左手から近鉄京都線が寄り添います。JR三山木からは3駅連続でJRと近鉄の駅が軒を並べます。西木津の手前でようやく別れると今度はJRの奈良線、更には関西本線と合流し、14時43分、終点の木津に到着となります。
ホームで少し待って14時57分発の大和路快速に乗車。わずか1駅、6分で終点の加茂に着き、15時08分発亀山行の普通列車に乗り換えます。加茂から亀山までは、なんと非電化区間。優等列車も名古屋~奈良間の急行「かすが」が1日1往復走るだけで、完全なローカル線です。唯一の街らしい街は伊賀上野ぐらいですが、それとて上野の市街地からは離れており、沿線は淋しいの一言に尽きます。
そんな淋しいところにも柘植という乗換駅があり、ここから草津線に乗車。線名こそ草津線ですが実質的には甲賀線と呼んでいい路線で、忍者の故郷・甲賀の里を南から北へと駆け抜けます。その甲賀の里ですが、同じく忍者の里である伊賀と比べると地形が穏やかで、しかも国道1号線(=東海道)が通っているせいか人家も結構目立ちます。
駅前に百貨店なんかもあって結構賑わっている草津で、2日ぶりに東海道本線に乗車。もっとも、この辺りでの愛称は「琵琶湖線」となっています。琵琶湖なんか、車窓から見えやしないのに…大津を過ぎると意外なほどトンネルが多く、17時10分、京都に到着。
ここから先は湖西線~北陸本線~東海道本線~高山本線と、本来向かうべき方向に尻を向けて走り続けるんですが、今回はこの京都で引き揚げることにします。駅ビルをひとしきり見て回り、夕食も平らげてから新幹線に乗車したんですが、なんと18時46分発! それでもこの日のうちに福島まで行けてしまうんですから、新幹線って乗り物はやっぱりたいしたモノだと思います。


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